痩せたくて吐くのがやめられなくなった話

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彼女の名前はジェイド。体はおデブ。デブって言い方がキツいけれど、彼女自身、過食症だった何年か前までは、自分のことをそう思っていたんだ。今では彼女は、もうおデブじゃないジェイド。彼女のお話は、摂食障害がどれほど危ないかを教えてくれるもの。さあ、彼女の身に起こったお話をしよう。

彼女はいつでも完璧主義だった。自分の周りは完璧じゃなきゃ気が済まなかった。部屋も、成績も、自分の外見も。それから、親友も。彼女の親友の名前はジョアン。二人は12歳のときに出会った。ジェイドは最初、ジョアンは最高の親友だと思っていた。ジョアンは頭が良くて、優しくて、いつでも応援してくるんだ、と。ジェイドが思春期に入ったころ、彼女の体は変化していった。それに合わせて、彼女の完璧主義も、もっと激しくなっていった。何か自分に良くないことが起こっているような気分だった。

それでもジョアンはジェイドに優しくしてくれていた。けれど、ジェイドはジョアンが本当に自分を応援してくれているのかわからなくなるときがあった。「叔母さんがジーンズをくれたんだけど、私には大きすぎてはけないから、あなたにあげる。きっとぴったりだから。」とか「ジェイドって勉強家だね!やっぱり女の子は顔じゃなくて頭の良さが一番!」とか、一見何気ないような一言をいうことがあった。そんな言葉を聞くうちに、ジェイドは自分がブスでデブだと思い込むようになった。その気持ちは日に日に大きくなって、彼女自身、なんとかしなくちゃと思うようになった。だから、ダイエットを始めたんだ。

実はジェイドは太ってなんかいなかった。彼女はごく普通の女の子。それどころか、痩せてすらいた。でも、彼女は、自分がゴジラのような醜くてデカいモンスターだと思い込むようになっていた。言葉で誘導されたり、こだわりを持ちすぎてしまうと、自分自身が歪んで写ってしまうんだ。彼女自身に、特に変化はなかったけど、自分の体のそこかしこにぜい肉がある気がしていたんだ。彼女は、自分が食べたカロリーを計算するようになり、食事制限をするようになった。1日に800カロリーしか食べないと決めた。強迫観念から、それよりもっと食べない、なんて日もあった。ダイエットを始めて数週間後、彼女は食欲を完全に失ってしまい、りんご1つで1日を過ごすようになっていた。でも彼女は、まだまだデブだと思い続けていた。体重計の数字はどんどん減っていたっていうのに。

彼女がダイエットを始めて数ヶ月くらい経った頃、彼女のお母さんが、何かがおかしいことに気づいた。それと同じ頃、ジョアンはジェイドに、自分の自慢をしたり、ジェイドにはまだまだ余分な体重があると思い込ませようとしていた。ジェイドの姿はもうガイコツみたいになっていたし、自分自身が拒食症になっていることにも気づいていたけれど、自分の理想の体型まであと1キロか2キロまでやってきたとも思い込んでいたんだ。もちろん、お母さんはそうとは思ってはいなかった。手遅れになる前に、ジェイドになんとかものを食べさせようとした。ジェイドは食べ物を口にしたけれど、自分が再び太ってしまうんじゃないかっていう不安で苦しむようになったんだ。そしてある時、食べたサンドイッチが耐えられなくて、彼女はそれを吐くことにした。

その時の心地よさといったらなかった。終わった後で歯を磨きながら、いつもこうやって吐き出せばいいじゃない、と思った。最高の解決法だとも思った。お母さんはジェイドが食事をする姿を見られるし、自分は痩せたままでいられる。こうして、彼女は過食症になった。また物が食べられるのは最高の気分だった。ジョアンと一緒にいると、いつもストレスを感じていたから、大好きなジョアンと一緒にいるためには食べて不安を落ち着かせる必要があった。そしてある時、彼女は暴食を始めるようになった。大きなボウル一杯のパスタや、ピザを3枚一気に食べては、トイレで吐いてを繰り返した。

これを始めたそのさらに数ヶ月後、ジェイドの体はボロボロになっていた。お肌の状態は最悪で、虫歯になった。髪の毛も抜け始めていたし、身体中アザだらけになっていた。1日中吐き続ける生活が体にいいわけがなかった。心の状態も不安定だった。食べて吐いてを繰り返している間は幸福感に満たされ、自分の姿を鏡でみたり、もっと痩せるアドバイスをしてくるジョアンと話をするたびに自暴自棄になるようになった。

ジェイドは今でも、自分の考えが変わったときのことを覚えている。そう、ジョアンの発育が始まったんだ。2年前にジェイドの体が成長したのと同じように。ジョアンの姿もかつての完璧な姿ではなくなっていった。それで、ジェイドは自分と同じように、ジョアンも痩せるためのアドバイスを必要としているんじゃないかと思った。だから、ジェイドは「痩せる方法、教えてあげようか?」とジョアンに聞いたんだ。そうしたらジョアンは「は?あんたみたいに食べて吐くのを繰り返すの?気持ち悪!私はダイエットなんて必要ない!何があっても私は完璧なんだから!」とわめき始めた。何でなの??ジェイドの頭に浮かんだ言葉がこれ。ジョアンはジェイドに完璧に痩せる方法をいつも教えてくれていたはずなのに、自分の番が回ってきたらそんなことを言うの?って。

結局、ジェイドはジョアンと縁を切ることにした。でも、そうした後、ジェイドの暴食をさらに悪化させてしまうことになった。そして、お母さんは同じ悩みで苦しんでいる人のための特別な診療所へ、ジェイドを連れて行ったんだ。今ではジェイドはいたって健康。彼女自身もそれが一番だと思っている。結局、完璧な人間なんて存在しないんだ。

音楽: Epidemic Sound: https://www.epidemicsound.com

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